音を身に纏う - SOWNの革新的ジュエリーデザイン
「私の音」とは何か。
私にとって音とは、まず音楽を思い浮かべる。それは朝目覚めて流す音楽、仕事に取り掛かる前に聴く音楽、集中したいときに聴く音楽、疲れたときに癒してくれる音楽——1日を通して、まるで「メイド・フォー・ユー」(Spotifyの好みの音楽が流れる機能)のように、気持ちを盛り上げてくれる存在だ。
今回取材したSOWNは、"OWN SOUND" = "私の音" の略称を持つブランドで、「音を身に纏う」という独創的なコンセプトから生まれた。
音をデザインに変える発想
しかし、一つの疑問が浮かぶ。
音は目に見えず、形がない。では、どうやってそれをジュエリーとして具現化するのか? 片倉氏はこの問いに対し、驚くほど明確なビジョンを持っていた。
SOWNの創設者、片倉氏は、大学院でデザインを学び、大手家電メーカーのデザイナーとしてスマートフォンなどのプロダクトデザインに従事していた。その後、時計メーカーで経験を積み、海外向けのメタルアナログウォッチのデザインも手がけた経歴を持つ。
彼は数学が得意であり、論理的にデザインを組み立てるタイプのクリエイターだ。だからこそ、感性だけでなく理論に基づいたデザインを生み出すことができる。
彼がたどり着いた答えは、「音を図形化する」という発想だった。
音を可視化する方法
音を可視化する方法として用いられるのが「クラドニ図形」。これは振動が作り出す幾何学的なパターンのことで、音の周波数によって形成される。その波動を捉えることで、「音を身に纏う」というコンセプトが実現された。
科学とアートの融合
音の波形をデザインの起点にし、それを立体的に起こす——このプロセスには、片倉氏の緻密な計算とセンスが活かされている。デザインの段階では、単にクラドニ図形を再現するのではなく、人体に馴染む曲線や、アクセサリーとしての美しさが考慮されている。
さらに、SOWNのジュエリーは「光の反射」までコントロールされている。一見するとシンプルなデザインに見えても、サーフェスの張り方を微調整することで、光の反射が変わり、見る角度によって表情を変える。そして、見えない部分にまでこだわりが詰まっている。たとえば、ピアスの裏側や内側の側面など、装着すると見えなくなる部分にも鏡面仕上げが施されているのだ。
ファーストコレクション
SOWNの最初のコレクションは、4つの音から生まれたジュエリーで構成されている。それぞれの音は、片倉氏自身の経験や感情を投影したもので、単なるデザインの枠を超え、「ストーリー」が込められている。
たとえば「Tokyo」は、都会の喧騒の音を図形化したデザインだ。東京の満員電車や賑やかな街の音には、華やかさと同時に寂しさや焦燥感が混ざっている。そんな感情の揺らぎをジュエリーに落とし込んでいる。
その他の3つのアイテムも、それぞれ異なる音の特性を活かし、装着することで前向きな気持ちになれるようなデザインとなっている。
SOWN - Tokyo ピアス
「音を纏う」という新しい体験
SOWNのアクセサリーを身に付けた人が、勇気をもらえたり、前向きになったりすることを願って——。
片倉氏はそう語る。
この記事を書いている私自身、そしてこれを読んでいるあなたも——それぞれが違う環境で育ち、異なる価値観を持つ。しかし、「音」という共通のエレメントを通じて、私たちはつながることができるのかもしれない。
この記事を書き終えた今、また新しい音を探しに行きたくなった。